ビーサイド


白石さんの部屋は、洋介の部屋に比べて物が圧倒的に少なく、必要最低限の物しか置かれていないように見えた。

「お茶淹れるから、はい。ここ座ってテレビ見ててね」

「ありがと」

差し出された座布団に座って、昔よく見ていたバラエティー番組にチャンネルを合わせる。

最近はこのバラエティーの騒がしい感じが見ていて疲れてしまうのだが、こんなときには気が紛れてちょうどよかった。

テレビ台には、おびただしい数のCDが並べられていて、彼が本当に音楽が好きだということがよくわかる。

「CDいっぱいあるね」

「何枚かおすすめ貸すよ。お耳に合うかわかりませんが」

白石さんの声に振り返ると、台所からひょこっと顔を出した彼と目が合った。
おどけたその表情は、また私の知らない顔だ。

― CDを借りるということは、つまりまた会える。

そんな下心が見透かされてしまいそうで、私は慌てて目を逸らした。

「あ、じゃあBesaidのも一緒に貸してほしいな」

「え、それはあげるあげる。そんな気に入ってくれたんだ」

いくらか上ずった白石さんの声が可愛い。

感情の読みにくい人だと思ったが、音楽の話をするときの彼は、純粋な子供のような顔をする。

そのあどけない表情は普段とのギャップが強いのだが、それがまたオバサンの心を掴んで離さないのだ。