ビーサイド


「顔赤いよ。酔った?酔ってないよね?」

頬杖をついた白石さんが言う。

彼の瞳には魔力でもあるのだろうか。
どうしたって目が合うと引き込まれてしまう。

「あの…暑くて?」

言った後になって、酔っちゃったかも、とかもっと可愛い言い訳があったことに気付いたが、それはすでに手遅れだ。

白石さんは声をあげて笑っていた。

「朱音さんやばいね。ほんとに28歳?」

「失礼!なったばっかだよ」

白石さんの言うことは最もではあるが、会って数時間でそんなこと言われるなんてあまりに悔しくて、残っていたレモンサワーを一気に飲み干した。

でもなんでだろう。
徐々に彼との距離が近づいているような錯覚を起こしていた。

「なったばっかって?最近誕生日だったの?」

「あ、え、うん。今日…」

私の言葉に、彼は噴き出した。
当たり前だ。誕生日に振られた女だとは、さすがに彼も思っていなかっただろう。

「今日!?まじか。おめでとう」

白石さんにとって、このおめでとう、は義理であっただろう。
流れでそう言ってくれただけだし、逆の立場だったら私も何の気なしにそう言う。

わかっているのに。

おめでとう、今日初めて言われたその言葉に、嬉しいんだか虚しいんだか自分でもよくわからない感情で溢れてしまって。

「あーあ。やっぱ大丈夫じゃないじゃん」

目からは次々に涙が溢れだしていた。