「ライブ、すごかったね。すごいかっこよかった」
タダで見せてもらっておいて、まだ感想を言っていなかったことに気付いた私は、開口一番そう伝えた。
「誘ってくれてありがとう」
そう言うと、白石さんは口元を押さえながらこちらこそ、と言い、まるで照れているかのような表情を浮かべる。
― えーそんな顔もするの?
間違いなく私の胸は、きゅんと音を立てていた。
「朱音さんってあんまりロックとか聴かなそうだなって思ってたから、そう言ってもらえて嬉しい」
満面の笑みで彼はそう言ってくれたが、何より顔が近くて、もう私の頭はそれどころではない。
「あ、うん。そうなの。あんまり聴いたことなくて。ごめんね」
「いやいや。そういう人に響いたっていうのがモチベーションあがるんだよ」
ぐいっとビールを流し込んで、白石さんは言う。
彼を喜ばせられたのなら、よかった。
安心して自然と頬が緩む。
手元の料理をつまみながら、お互いの仕事のことだとか出身地のことだとか、そんな他愛もない話を続けるうちに、だんだんと緊張がほどけてきた。
すでに3杯目に突入したアルコールの力も、大いにあったとは思うが。
「朱音さんのそれおいしい?」
「ん?これ?飲む?」
― しまった。
そう気付いた時には、私のグラスは彼の口に運ばれており、自分から言っておいて戻ってきたグラスに再び口をつけるのを躊躇した。
しっかりしないと。
相手は洋介じゃないのだ。

