ビーサイド


Besaidのライブは、あっという間に終わってしまった。

どの曲も勿論聴いたことはない。
それなのに、わくわくしてドキドキして、涙腺の緩んでいた私は涙さえ流した。
おそらく30分もなかったであろう間に、こんなにも感情の起伏が激しくなったのは初めてである。

次のバンドがステージに姿を現した頃、興奮冷めやらぬ私の肩を誰かが叩いた。

振り返ったそこには、汗でまだ髪の濡れたままの白石さんが立っていた。

「あ…」

お疲れ様ですと声を掛けようとしたのだが、彼は私の手を掴んで歩き出した。

― あれ、手繋がれてる。

え、大人って付き合ってなくても手繋ぐんだっけ。
いやむしろそれ子供の頃じゃない?

自問自答しているうちに地上に連れ出されると、ようやく彼の声がしっかりと聞こえるようになった。

でも少し、耳鳴りもしていて。
それがうっとおしいはずなのに、なんだろう、そんなに不快ではないのだ。

「耳平気?ここ音大きめなんだよね」

「あ、うん。大丈夫。お疲れ様でした」

声を出してみるとやっぱり違和感があった。

「まだ片付け残ってるから、あと15分くらい待てる?」

待てるってそれはもちろん待てるのだが、本当に待ってていいのだろうか。
待った後、どこへ行くのか、何をするのか。

こんなことが自分の身に起こるとは、今日のお昼まで全く考えもしてなかったから、対処法がわからない。

どうしたらいいのだ。

外は完全に日が落ちて、より一層風が冷たくなっていた。
それに吹かれた彼は、汗が冷えたのだろうか小さく震えて。

こんな人に声を掛けてもらえることなんて、きっとこの先一生ない。

これは神様がくれた、誕生日プレゼントだと思うことにしよう。

「うん、待ってる」

都合よく考えて、私はそう答えた。