その後は、野村くんが戻ってきてお開きになった。

お店の前で「これからもよろしく」と挨拶を交わすと、関谷さんとはこの場で解散する。

その時、私は意味ありげなウインクを頂いたけど深くは考えないようにしよう。

頭を下げて、後ろ姿を見送る。
関谷さんが角を曲がって、姿が見えなくなると急に横から視線を感じた。

「…何?」

出張は無事に終わったと思っていた。
というか今もそう思いたい。

「…ホテル戻りますよ」

でもまだ何かあるかもしれないと、野村くんに取られた右手と不機嫌な声色に嫌な予感を感じ取ってしまった。