「おい、嫌がってるだろ」
「な、なによ」
「高杉が嫌がってるだろ。やめてやれよ」
高田くんは私たちに近付いてきて、
貴子を睨みつけた。
なんで高田くんが?
高田くんは私の前の席の男の子で、
喋ったことは一度もない。
それなのにどうして高田くんが
私を庇うような真似をするの?
訳が分からずに高田くんを見つめていると、
彼は貴子につかつかと歩み寄って
私の腕を掴んでいた手を掴みあげた。
ひゃあ!と小さな悲鳴をあげた貴子は
そのまま一歩後退する。
高田くんは貴子の腕を掴んで睨み続けていた。
「友達なんだろ。だったら気持ち、
汲んであげろよな」
「な、なんで高田にそんなこと
言われないといけないの?」
「見てて腹が立つんだよ。
いつも取り巻き連れて偉そうにして。
どうせ上とか下とか決めつけてんだろ。
やめろよな、そういうの」
貴子がかっと赤い顔をして唇を噛みしめた。
図星だったのか、何も言い返せない貴子を見て、
少し胸がモヤモヤした。
心がざわついていく。
やめて、高田くん。
貴子をこれ以上責めないで。
私は、貴子がいないと何も出来ないんだから。
「や、やめて!」
私が小さく叫ぶと、
教室中がしんと静まり返った。
みんなが私を見ている。
当然といえば当然かもしれない。
いつも金魚のフンみたいに貴子にくっついていて、
何をしても怒らない私が、声を荒らげているんだもの。
みんなびっくりした様子で私を見た。
「貴子は悪くないの。私が、悪いの」
小さく言うと、高田くんは舌打ちをした。
そして貴子の手を離すと、
自分のグループに戻っていった。
それを合図に、また教室は
ざわざわと元の騒がしさを取り戻していく。
私は貴子を見つめた。
「行こう」
取り巻きの子が貴子を促すと、
チャイムが鳴り響いた。
貴子はしばらく私を驚いた顔で見つめていたけれど、
諦めた様子で自分の席に戻っていった。


