片翼の蝶




「茜、放課後はどうする?
 うちらと一緒に買い物に行く?」


「あっ、私はいいや!
 お母さんにおつかい頼まれてるし」


「そう。ならいいや」


このグループの中心人物、
貴子が怪訝そうな顔で私を見た。


分かってる。


私はノリが悪いから
グループで浮いているってこと。


それでも一人になりたくはないから、
必死で貴子の機嫌をとってグループの中にいる。


それがどれだけ苦しくて情けないことか。



貴子はグループの子たちを引き連れて
教室を出て行ってしまった。


その背を見つめて、自分の席に
深く腰を下ろす。


ため息を一つした。




みんなが教室からいなくなって、
一人取り残される。


気づけばグランドでは
部活動に励む声がこだまする。


その声を耳の奥に押し込めて、
私は立ち上がった。


カバンを持って教室を出ると、
長い廊下をゆっくりと歩く。


この学校の廊下は複雑に入り組んでいるから、
初めて入った人はまず迷う。


そんなの、もう三年目だから慣れたけど。


その入り組んだ廊下を歩いて、
三階へと続く階段を昇る。


十八、十九、二十の階段を昇って
また平らな廊下を歩く。


突き当りの部屋まで来ると
その扉を静かに開けた。







壁一面に本棚が立ち並ぶ。


どこか古臭い匂いを帯びて、
この部屋は少しの埃っぽさを孕んでいた。


カバンを長机に置いて、本棚へと近づく。


時代小説とライトノベルの本棚が向かい合う場所で、
私は足を止めた。


今日はどれを読もうか。