友達じゃないのかって聞かれると、
まあ友達なんだけれど。


この状況はどう見たって
そう見えないのは分かっている。


珀が問うのも無理はない。


私はなんでこんなことになっているんだろう。


じりじりと背中が焼けるように暑い。


汗が額から滑り落ちてくる。


私はじっと貴子の目を見つめた。


貴子の眸は鋭い。


いつもは優しい貴子も、今じゃ
面影もないくらい怒っている。


ああ、どうしたものか。


正直に言ってもいいけれど、
絶対に馬鹿にされる。


そんなあり得ない話信じるわけがない。


鼻で笑われて終わりだ。


でも、ここで謝らないと貴子に嫌われてしまうかもしれない。


それだけは絶対に避けたい。


「ご、ごめんなさい!忘れていたの」


「忘れてた?それだけ?」


「そ、そう。忘れてしまって。ごめんなさい」


貴子はピクリと眉を動かした。


他の子も訝しげに私を見つめる。


貴子は一旦目を強く閉じて、
それから再び目を開けた。


さっきよりも心なしか眸が優しい。


「次は気を付けてよね。
 今週の土曜日こそ、買い物に行きましょう」


「う、うん。ごめんね。気を付ける」


「さ、行きましょう」


貴子は満足そうに一度頷くと、
取り巻きを連れてトイレを出て行った。


一人取り残された私はきゅっとスカートの裾を握りしめる。


怖かった。


中学の時のことを思い出していた。


あの頃の恐怖が全身を襲う。


気持ち悪さが腹の奥からやってくる。


もう二度とあんな目に遭いたくはない。


せっかく遠くの学校を受験して、
毎朝電車に揺られながら
頑張って学校に通っているのに、


あの地獄を味わったら全部が水の泡だ。


私の平穏な学校生活は貴子の手に委ねられている。


とにかく惨めでもなんでもいいから、
貴子にくっついていないと。