片翼の蝶




「本当にあいつは死んでしまった。
 その時思った。自分が殺したんだって。
 まるで、完全犯罪のようだ。
 俺はあいつを、この手で死に追いやったんだ」


大志が話し終えて、沈黙が走った。


空気がピリピリと痛い。


途端風が吹いた。


とても大きな風が。


珀を見ると、珀は
唇を開閉させて大志をじっと見つめていた。


〈そんなはずはない。
 俺は確かに、病気で死ぬはずだった〉


珀は弱々しい声を振り絞って言った。


〈大志は関係ない。
 たとえそうだったとしても、
 俺は自分の意思で死んだんだ!〉


半ば怒鳴るように叫んだ珀は、
大志に近付いた。


肩を掴もうにも、
すり抜けてしまって触れない。


そのもどかしさにイラつくように
舌打ちをした珀は、座り込んだ。


〈手紙を〉


えっ?と思って珀を見ると、
珀は私を見つめて口を開いた。


〈手紙を読めと言ってくれ〉


「て、手紙を読んでみたらどう?」


「これをか?」


「何が書いてあるのか気になるわ」


「そうか」


大志は薄く笑みを浮かべると、
オレンジ色の手紙を握りしめた。


ゆっくりと封を開けて中から手紙を取り出す。


読み始めた大志は次第に眸を大きく揺らした。


大志の眸を見つめる。


上から下へとその眸が動く。


どんどん動いて、止まらない。


その眸が留まった時、大志は顔を上げた。