片翼の蝶




ふっと自嘲気味に笑った大志を見て、
珀の眸が揺れた。


口を開閉させて、
ただじっと大志を見ている。


気付くと珀は立ち上がっていた。


「珀はよく、俺に懐いていた。
 俺の言うことはなんでも鵜呑みにして、
 俺のすることはなんでも真似をして、
 小さい頃はかわいかったよ」


小さい頃は、と念を押すように言った大志を見て、
私は思わず笑った。


そんなに言うなら、珀の小さい頃を
見てみたいと思った。


今の珀とどれほど違っているのかな。


「昔、タイムカプセルを、埋めたんだ」


片翼の蝶に出てきたタイムカプセルのことかしら
と思って目を見張る。


大志は珈琲に口をつけると、
声を一段低くして言った。


「面白半分で、あいつは自分が死ぬことを
 予言したんだ。俺も一緒に考えた。
 どこでどう死ぬのか、アドバイスしてやったんだ」


面白半分か。


それにしてもよく書き上げていたと思う。


小さい頃から物書きをしていた二人にとっては、
容易い事なのかもしれない。