片翼の蝶



「珀とは、友達なの?」


「ああ。珀は俺の、唯一の親友だ」


大志はそう言うと扉を開けて手招きした。


「外で話すのもなんだから、中に入れ」


「う、うん」


私は促されるまま、大志の部屋に入ることにした。


玄関で靴を脱いで、出されたスリッパに履き替える。


中は質素なつくりになっていて、
必要な家具以外は何もなかった。


簡易ベッドに簡易テーブル、
小さなキッチンに小さなタンス。


テレビは無かった。


こんな部屋で生活している大志を思うと、
胸が痛くなる。


私だったらとてもじゃないけど真似出来ない。


テレビのない生活なんて耐えられないし、
何もかもが足りなすぎる。


本当に生活できているのか心配になるけど、
大志は至って元気そうだ。


きっとこれだけで大志は満足なんだろうな。


「珈琲でいいか?」


「あ、私珈琲は飲めないの」


「……牛乳でいいか?」


「うん」