片翼の蝶




「珀の友達?」


「そ、そうです。今日はあなたに、
 大志さんに届け物をしに来ました」


「……大志でいい。
 敬語もいらない。同い年だ」


大志は低い声でそう言うと、
扉にかけていた手を離して私に向き直った。


どうやら窮地を脱したみたい。


珀の名前を出しただけで
こんなにも信用してくれるなんて思わなかった。


「届け物って?」


「あ、あの。これなの」


私は急いでポケットから
オレンジ色の手紙取り出した。


それを大志に見せると、大志は
訝しげにその手紙を見つめた。


すぐには受け取らない。


それはこの男を見た瞬間から予想はしていた。


この人は、慎重型な人だ。


これが珀からの手紙だって
確信が持てない限り、


受け取ることはないだろう。


「証拠は?」


「えっ?証拠って言われても……」


私には幽霊が見えて、
幽霊となった珀に言われて


手紙を届けに来たなんて
死んでも言えない。


でもどうしたものか。


証拠なんてどこにもない。


ということは私、この人に
手紙を届けることは出来ないの?


困っていると、それまで黙っていた珀が
私と大志の間に入って、大志をじっと見つめた。