片翼の蝶




私は手紙をポケットにしまうと、
急いで土を元に戻した。


スコップを倉庫に戻して足早に庭を出る。


心臓がドクドクと高鳴る。


まるで完全犯罪に手を染めたみたい。


悪い事をしているのは分かっている。


ていうか、なんで私が
こんなことをしなきゃいけないの?


そう思って珀を睨みつけると、
珀は楽しそうに笑った。


〈何怒ってるんだよ〉


「別に」


〈それを、届けてほしい〉


「誰に?」


珀は手紙に視線を落とすと、
白い指先を突き立てた。


〈オレンジの手紙を、
 隣町の赤松大志ってやつに〉


「赤松、大志?」


私はオレンジ色の手紙を見つめた。


確かに、手紙には「赤松大志」と書かれている。


隣町まで行くには、少し時間がかかる。


私があからさまに嫌そうな顔を見せると、
珀は目を伏せた。


〈やっぱり、ダメか〉


しょんぼりする珀を見つめる。


そんな顔、反則よ。


そんな顔されたら、断り切れないじゃない。


もし断ったら、きっと罪悪感に苛まれてしまう。


それだけは絶対に嫌だ。


幽霊に呪われでもしたらたまったものじゃない。