片翼の蝶



梨花は翔太がいることで、
出来ることが増えていった。


自信のなかったことが出来るようになり、
挑戦することが増えた。


翔太が笑って「大丈夫だ」と言えば、
本当に大丈夫な気がしてくるのだ。


梨花と同様、翔太の体の調子もよく、
外に出る機会が増えた。


二人はいつも一緒。


何をするにも二人だった。


付き合っているの?なんて
周りに聞かれたりもしたけれど、


そんな言葉では片付けられない何かがあった。


そんな関係じゃない。


いわば二人は血の通った兄妹でもあり、
契りを交わした夫婦のようでもあった。


「ねえ、翔太。私たち、何があっても……」


「うん。俺たちはどこまでも一緒さ」


梨花は幸せだった。


翔太といると心が弾む。


自分がどんどん、綺麗になっていく感覚に陥る。


高校生の恋愛とは不思議なものだ。


色んな制限が設けられているのに、
たとえそれが一時の恋愛だったとしても、


当人たちにとっては一生に一度の恋のように思える。


梨花もまた、そう感じていた。


それでも、この恋は波乱を迎える運命だった。


翔太は忽然と、梨花の前から姿を消した。


家にも帰っていない、
学校にも来ていない。


じゃあ彼はどこに行ったのか。


梨花はふと、あの時の手紙を探した。


探して、探して、やっと見つけた。


ボロボロの手紙を。