片翼の蝶




「大学合格おめでとう。先生」


「やだ。先生なんて呼ばないでよ」


「いいだろ。作家先生なんだから」


私は、あれから小説を一つ書き上げた。


それが見事に受賞して、
私は小説家としてデビューした。


大志にはいろいろとお世話になったから、
お礼を言うためにここに来ている。


珀とお別れをして、
私は小説を書こうと志して筆を走らせた。


大志にアドバイスをもらい、
何度も書き直してはチェックして、
やっと出来上がった作品。


私にとって大切な一冊。


まだ書店に並んで数週間しか経っていないけれど、
飛ぶように売れている。


この作品の題名についていろいろ議論はあった。


だけど問題なく順調のようだった。


「あれから珀は?どうなの?」


「それが全然。逝っちゃったんだね、本当に」


私が空を見上げてそう言うと、大志はふっと笑った。


「まあ、どこかで見てるだろ」


「そうだね」


「珀だもんな」


「珀だもんね」


お互いにふふっと笑い合って、二人で空を見上げた。



雲一つない、青空だった。







ねぇ、珀。聞こえてる?


私、あなたのために小説を書いたよ。


あなたが書いてくれた小説に、
私も答えたくなっちゃった。


私のために、素敵な作品を残してくれてありがとう。


だから私も、あなたへ告ぐ物語を書いたよ。


少しあなたを美化しすぎたかな?


拙い文章だけど、読んでくれるよね?




言いたいことは沢山ある。


比翼連理。私もあなたとそうなりたい。


あなたは確かに、私の片翼だったね。


ただ一つ、あなたに聞いてほしいことがあるの。


あのね、私、あなたのことが大好きだよ。




ちょっとひねくれてて、不器用なあなたへ告ぐ。










あなたを愛している、と。