片翼の蝶





「……い、……ぎ、……すぎ、高杉!」


はっと、目を開ける。


眩しい光が差し込んできて、
思わず目を細めた。


一体ここはどこ?


「た、大志?」


「そうだ。俺だ。高杉、だよな?」


「う、うん」


「良かった。無事に戻れたんだな」


「私、帰ってきたの?」


体を起こすと、そこは見慣れた部屋だった。


何もない質素な部屋。


パソコンが一台、起動していた。


ここは大志の部屋なの?




テーブルの上には、珈琲が二つ、置かれていた。
湯気はもう出ていない。


それを見て、今まで珀がここにいたんだと知る。


私は弾かれたように辺りを見回した。


「珀!珀!」


隠れるところは何もないはずなのに、珀の姿がない。


呼んでみても、返事もしない。


私は立ち上がってウロウロした。


そんなに探したって見つからないのに、
訳もなく人様の家を探る。


そんな私を見て、大志は言った。


「珀、いないのか?」


「う、うん。いないの……」


「珀から、伝言、預かってる」


「伝言?」


眉を顰めて大志を見ると、
大志は言いにくそうに鼻の辺りをかいた。





「家に帰って、俺の小説を読め、って」





「小説?」