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なぜ思いつかなかった。

たしかにどれだけ忙しくても
彼女は必ず家に帰ってくる。

ならば、遅い時間になっても
明け方になったとしても
学校さえバイトさえ終わってしまえば、
俺には自由な時間が腐るほどある。



忙しいなんて、ここでは
直接話すのを避けた言い訳でしかない。



本気で弁明したいなら
言いたいことがあるなら
面と向かって言え。



そう言われたような気がした。



「ありがとう
ちょっと、用事思い出したから帰るわ」

「え?」

俺は未だにきょとんとしている友人に
頭を下げて、急いで走り出す。



今日はもう授業は無い
幸なことに、バイトもない。



許してもらえるかどうかじゃない。
会ってくれるかどうかじゃない。


そうだ、彼女が食べたがっていた
高級ケーキでも買っていこう。

ご機嫌取りだと思われて、
余計不機嫌にさせるかもしれない。


それでもいい



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