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「あっ、財布忘れてきた」

食堂につくなり、俺は忘れ物に気づいた。

「ちょっと取ってくるわ」

そう、友人に告げて
俺は再び講堂に戻ることになった。

途中、教授に呼びかけられ
戸締りまで任されてしまった。



そして、目的地に足をふみ入れた瞬間
思わず俺の足は止まった。

窓側で天使が机に伏せている。


座っていた席に忘れられた荷物を取り、
再び彼女へと視線を向ける。



戸締り...どうしようか



そう思いながらも、
俺の足は無意識に彼女の元に近づいていた。



「...あの、」



静かに出した俺の声は、
情けないほどに掠れていた。

そっと、彼女の頭に手を伸ばし
指先でそっと触れる。

ビクッと彼女の体が揺れて、
また、弾むように彼女は顔をあげた。
同時に、俺の動きも停止する。

何をしてるんだ、俺。ー



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