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講義が終わる頃には、
彼女はすっかり睡魔に負けていた。



そんな彼女の横に、人影が近づいて
頬をつつかれると同時に彼女は飛び起きた。

はっ、と背中を弾ませた彼女のリアクションは
あまりにも可愛らしくて堪らなかった。

でも、その光景を微笑ましく眺める余裕は
まったく俺にはなかった。

ー 仲良い男がいる。

初めて知った事実だった。

彼女を起こしに来たのは男で、
起こされてすぐに笑顔を見せたあたり
2人はある程度気心はしれている様子だった。



「お前、見すぎ」

友人に小突かれて、俺は我に返った。

「そんなんじゃないし、」

「嫉妬が顔に出てるぞ」

「そんなんじゃないって...」

「はいはい、飯行くぞ」

軽くあしらうように笑う友人を
睨みつけながら、俺は講堂を後にした。




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