ほとんど人の乗っていない電車内で、
私は大きなため息をこぼした。

今日は散々な日だった。

地元から離れた大学に通う幼馴染と
飲んでいると、
その店にその幼馴染の彼女が現れて
軽く修羅場になった。



浮気された女性の敵意は浮気相手に向くと言うが
なるほど
彼女が私に向けた視線は刃物も同然だった。

「何してんの」

と吐き捨てて、店から出ていった彼女を
幼馴染は慌てて追いかけていって、
数分後、酷いやつれた顔で帰ってきて
申し訳なさそうにお開き宣言をされた。



気の毒に思えたが、
同時に
嫉妬されるほど愛されている彼が羨ましかった。



私も愛されてみたい―



そう思うようになって、もうすぐ10年。



私の片思いは1度も成就したことが無い。




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