仕事の休憩時間に成ると、眞智子は真っ先に喫煙所へ向かう。
ステンレス製のシガレットケースを開けると、もう三本しか煙草が入っていなかった。今から一本吸うので、残り二本に成ってしまう。喫煙所には、眞智子の他に誰も居ない。口唇を歪ませて、舌打ちをした。眞智子が煙草に火を点けるのと同時に、数ヶ月前に入店したアルバイトの女の子が喫煙所に入って来た。
眼の周りが黒く縁取られていて、更に執拗なまでにマスカラを睫毛に塗りたくっていて、目元が散らかっている。縁取りと黒眼が同化していて、何処に視線を向けているのか判らない。金髪なのか茶髪なのか判然とせず、逆毛を立てたいのかストレートヘアにしたいのかもはっきりとしない髪型をしている。脱色のし過ぎなのか、コテの当て過ぎなのか、毛先が溶けている。
「ぉ疲れ様でぇす」
彼女は会釈しながら、ぴょこぴょこ歩いて眞智子の隣に立った。
「お疲れ様」と眞智子は返し、彼女のネームプレートを見遣った。いつも呼んでいる苗字の横に、「ゆり」と記されていた。