俺の同僚曰く、世界平和はどんちゃん騒ぎと笑顔でできている「上」

ギール人の子どもが水をリリーにかける。リリーも楽しそうに応戦する。その姿はまるで子どもだ。

「全く…。あいつは本当に大人なのか?」

俺は深いため息をつく。

「リリーさん、とても楽しそうですね」

ギール語ではなく、世界共通語が耳に入った。振り向くと、ジャックが立っていた。

「ここに皆さんが泊まっているとお聞きしたので、ギール国から出る前にご挨拶だけでもと思いまして……」

ジャックは海には合わない古いスーツを着ている。それでも、なぜか違和感がない。それが不思議だった。

「わざわざありがとう。色々、心配をかけてすまなかった」

俺がそう言うと、ジャックは「いえ。こちらこそ、昨日は大変だったのに顔を出せなくてすみませんでした。生徒同士のトラブルが起きてしまって……」と謝る。本物の大人を見た瞬間だ。

ベチャッ、と顔に何かがかかる。それは……海岸にたくさん流れ着いている海藻だ。

海の方を向くと、喜び飛び跳ねる子どもたちとリリー。なるほど、俺は的にされていたのか。

「こら!!空気を読め!!この問題児ども!!」

俺が追いかけると、みんな楽しそうに笑いながら逃げて行く。しかし、足がとても遅いリリーをすぐに捕まえることができた。