「わあ〜!小町、ありがとう!おいしそう」

リリーが早速飴の袋を開け、口に放り込んだ。その顔がすぐに嬉しそうになる。

「おいしい!レモン味だ〜」

その無邪気な笑顔は、今の世の中の汚さを何も知らない無知な子どもとそっくりだ。とても守られた安全な場所で過ごしてきたのだろう。

それが羨ましいと同時に、腹ただしくもある。世間がどんなに大変かも知らずに贅沢に過ごせるのだから。貴族や王族にとって、食べ物やお金は湧いて出てくるものなのだろう。

そんなことを心から思うほど貴族が嫌いなはずなのに、リリーの無邪気な笑顔を見ていると何だかどうでもよくなってくる。

「おい。俺の飴もやろう」

そう言いリリーの手に自分がもらった飴を置く。リリーは驚いた顔を見せた。

「いいの?」

「俺は満腹なのでな。それに、お前にまた騒がれたら面倒だ」

「ありがとう!嬉しい!」

一言余計なことを言ったのに、リリーは明るく笑う。俺はついリリーから目をそらした。

「こっちはオレンジだ!こっちもおいしい!」