「きゃあああ!引ったくり〜!!」

後ろから女性の悲鳴が聞こえた。振り向くと、黒いフードを被った男が中年女性のバッグを奪い、走り去っていくところだった。

「ベル!あの女性を頼む!」

ベルにそう言うと、「任せて!」と言っているような強い眼差しを向けた。

リードを離し、ベルは女性のもとへ、俺は引ったくりを追いかける。

引ったくりの足は想像以上に速い。普通に生活をしている人なら追いつけないだろう。しかし、俺はこんな時に備えて訓練している。俺は足に力を入れ、スピードを上げた。

「待てっ!!止まれっ!!」

大声で叫びながら追いかける。引ったくりは俺が追いかけて来ることに驚いた顔を見せた。

引ったくりとの距離が縮まる。

引ったくりの腕を掴み、地面に押さえつける。逃げようと暴れる引ったくりの手を捻った。

「ワン!ワン!」

ベルが女性を連れてやって来た。俺は引ったくりが持っていたバッグを女性に渡す。

「これはあなたのバッグですね?」

「はい!そうです!」