俺がリリーと酒を飲んでいると、宝石が散りばめられたドレスを着た女性が俺に近づいてきた。

「よろしければ、一曲だけでも踊っていただけませんか?」

女性はそう言って微笑む。突然の申し出に、俺は戸惑いグラスを落としそうになった。

「リーバス、女性を待たせちゃダメよ!早く行って来なさい!」

少し怒った口調で、リリーが俺の背中を押す。

「お、おい!リリー?」

俺を押すリリーは俯いていて、表情はよく見えない。しかし、怒っているのは明らかだった。

しかし、それを聞く間も無く、女性に腕を取られ俺と女性は踊り出した。

リリーと昨日踊った時のような感情は、どこにもない。リリーのようにその女性の体は華奢だが、一緒に踊りたいと思うのはやはりリリーだ。

「リーバスさんは、リリーさんと仲がよろしいのですね」

踊りながら、女性が俺に話しかける。

「ああ…。まあ、リリーの監視役のような気もするのですが……」

「聞きたいのですが、あの方って本当にタンバリー国出身なのですか?」

「ええ、そうですよ。彼女はタンバリー国の貴族です」

女性の目が見開かれる。

「いいえ!おかしいですわ!タンバリー国出身の貴族たちは、女性は仮面をつけてパーティーに参加するのがタンバリー国貴族のしきたりです!ありえません!」

衝撃の発言に、俺は踊る足を止める。女性も驚くことなく足を止めた。