みんな、リリーのことを心配気な表情で見て、ゆっくりと去っていく。

全員がいなくなると、辺りにはリリーの呼吸音しか聞こえなくなった。

「リリー、俺の真似をしてくれないか?」

リリーは涙が溜まった目で俺を見る。一刻も早く苦しみから救ってやりたいと俺はリリーに優しく話しかける。

「ゆっくり吸って、ゆっくり吐く。ゆっくり吸って、ゆっくり吐く」

俺は、ゆっくりと息を吸ったり吐いたりを繰り返す。

リリーもしばらくすると、ゆっくりとした呼吸を意識し始めたようだ。

数分ほどが経過しただろうか。リリーの過呼吸はようやく治った。

「……大丈夫か?」

俺の問いかけに、リリーは涙を拭いながら頷く。

「……ごめんなさい」

リリーの予想外の言葉に、俺の胸が震える。俺は少し怯えたようなリリーの頭に優しく手を置き、優しく撫でる。

「気にするな。大丈夫だ」

リリーはゆっくりと顔を上げる。涙が一筋、頰を伝う。

「……ありがとう」