俺の同僚曰く、世界平和はどんちゃん騒ぎと笑顔でできている「上」

ふと、黄色いドレスに目が止まる。胸元にバラをモチーフにしたリボン刺繍がされたドレス。

俺はそのドレスを手に取り、リリーに手渡す。

「こっちも着てくれないか?」

今、自分がどんな顔をしているかわかる。目の前にいるリリーと同じ赤い顔だ。

リリーは無言で頷き、試着室へと入って行った。

しばらくして、リリーが「どうかな?」と言いながら出てきた。

その姿を見た刹那、時が止まったような気がした。

今のリリーを何かに例えるのなら、漆黒の中を輝く月や、枯れ果てた大地に咲く一輪の花のようだった。貴族らしい格好をしたリリーは貴族を通り越してどこかの国の姫君を想像させた。

「……とても……よく似合っている……」

そう言うのが精一杯だ。ジャックならもっと気の利いた台詞を言えたのかもしれない。

リリーは顔を真っ赤にして嬉しそうに笑う。

「じゃあ、これにする!」

リリーはそのドレスを購入し、俺たちは店を後にした。

貴族が買い物に来るような店が並ぶ通りを出ると、胸がすっと一気に軽くなる。やはり、自分にはあんな場所は似合わない。

多くの一般市民が忙しそうに道を歩いて行く。