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木々の間から、ひかりがこぼれる、初秋の日。

僕は、彼女と会う当日になって、その日が、彼女の誕生日である事に気付いた。

……しょうがない、会ってからどこか彼女の好きな店にでも行って、欲しいモノを選んでもらうか。

大体、自分は、彼女が何が欲しいのか、全く思いつかない。


そう言えば、この前の僕の誕生日には、彼女は時計をくれた。


『春から、社会人だね。時計しない、せい君も、一つは要ると思って』


…嬉しかった。


時計は確かに苦手であったし、ずっとしていなかった。
しかしさすがに、社会に出て働くとなると、必要だと思っていたところだった。


彼女は、いつもそんな風に、僕に贈り物をくれる。

派手でなくて、サプライズ的なものでもなく、ありきたりの、普通なもの。

そして、ちょうど自分が欲しいなと、思っていたモノであったり。
また、別に要らないかと思って、持っていなかったモノでも、使っていると自然と馴染んで、いつの間にかお気に入りになっていくモノ。


…何で、わかるんだろうな。


友人の誰かが言っていた、彼女が似合いそうだと思うのとか、自分が着けて欲しいと思う、ネックレスとかピアスとか、選べばいいんだよ、と。

…それが全くわからない。彼女はもともとそんなにアクセサリーは着けていない。時々、小さな花のピアスを着けていたような気がするが…


…本当、ダメだ、全く思い付かないし、時間もない。今日の所は彼女に委ねるのが懸命であろう。


僕は、いつか彼女から貰った、水色のボタンダウンのシャツを着て、家を出た。


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