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六月の小雨の日。




赤いレンガの前の、新芽の小さな葉に、ひたひたと雨滴が、おちている。




君を待つ。



前を見据えて。





静かにはじまる、オルガンの音。



扉のきしむ音。





…きしむ車輪。





僕は、ゆっくりとふりかえる。




カレン




白いカレン






白の、カレン






ゆっくりと、ゆっくりと近づいてくる。






車椅子に乗った、白のカレン。




路の途中で、柔らかな灯とともに、ふと、とけて消えてしまいそうに見えて



僕は思わず、近づいていく。






そして


カレンの小さなカラダを抱きかかえた。






ふわりと、僕の腕におさまる君。






羽のように軽い君。






カレンは翼が片方だけ、はえている。









『…誓いますか』


アルトの低音の神父。


『誓います。』




『…誓いますか』


アルトの低音。


『……』


カレン



腕の中の白のカレン






ぽろぽろと、涙が伝う音まで、きらきらと、見えるように、こぼれおちた。









『……せ…君っ』




『カレン』




僕は問う。君の瞳に。






『誓いますか』



『……』




『……誓います』









一生分の愛を、君に捧ぐ事を、誓います。









『カレン、愛している』






涙の粒を、そっと、唇で包む。




『わたしも、愛してる…
 一生…より、もっとずっと永く
 愛してくから
 愛し続けるから 』




カレン




カレン




僕のカレン





僕は君だけのもの


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