優しくて、気の利く伊藤先生が、少し悲しそうな顔をして私を見た。
だいたいはわかる。
白浜先生のことだろうな。
「…俺も聞いたんだ。譲の話」
「…後継者の、ですか?」
「そう。まさか3年持てるかのところで辞めるなんて思ってなくて」
先生は、そこまで言うと言葉を詰まらせた。
伊藤先生は優しいから。
私が傷つくようなことは、言いにくいんだろうな…きっと。
「……婚約者の話も、知ってるよな…?」
「…はい」
すると先生の顔が、切なく歪んだ。
「……大丈夫?」
「大丈夫…じゃないです…それでも、卒業するまでは…」
「その気持ちはわかる。でも、あいつは全く素直にならないし、譲の親父を説得するのも無理に近い………今からでも少しずつ、離れてみない?」
離れる…?
私が…?

