放課後、呼び出された場所へ向かう。校舎裏はグランドとも校門とも面していないので、人気がなく校舎が影になり少し暗かった。

行ってみると、知らない男の子がいた。眼鏡をかけた真面目そうな子。

私を見たとたん、伏し目がちにおどおどしていた。

「手紙をくれたよね?」

あたしが言うと、

「えっと、俺となりのクラスの山田って言います。
ずっと、観月さんのことが好きでした。付き合ってください。」

彼は、緊張しているのか、顔を赤くして頭を下げた。


話した記憶もないのに、なんで好きなんだろう…。

「あの、私のどこが好きなの?」

彼は、少し困った顔をしながら、顔をあげると
世話しなく目線を動かしながら、呟いた。
「えっと…。あの…。顔です…。」

え?かお…。
思わずキョトンとしてしまう。

「観月さん、めちゃくちゃ、かわいい顔をしてるし、小柄で小動物ぽいというか、守ってあげたくなる雰囲気だし。マネージャーとかしてるから、尽くしてくれそうだなって…。」
と、なぜか照れながら一気に捲し立てる。



は?コイツはなに言ってんの?



ぶっちゃけ、化粧で盛ってることを差し引いても、
顔はそこそこかわいい方だとは思う。

目が大きくて色白の童顔だし、スカウトされたこともある。
でも、基本的には、親の組み合わせだ。
かわいく産んでくれた親に感謝はしているし、
でも、自分の努力ではないし、そこを評価されても困ってしまう…。

それに、小柄なのはコンプレックスだし、守ってほしいとも思っていない。あたしは、気は強いし、尽くすより尽くされたいし、どちらかというとワガママだ。

あたしのことを好きになってくれて、嬉しいはずなのに
なんだか、複雑…。



あたしは、よくこういう告白をされる。
もう、慣れたはずなんだけどな…。
あたしの外見しか見てない人に告白されるたびに、
内面を否定されたような気持ちになる。



郁斗も、勝手なイメージ作り上げられると困るって言ってたな…。

「ごめんなさい。あたし、今部活とかで忙しいからムリです。」


「じゃあ、3年だし部活引退したら付き合ってくれる?」

と、思ったより食い気味に詰め寄ってきた。

「そのあとも、受験とかあるし…。
あたしの表面しか見てない人とは付き合えないからごめん。」


しつこいから、あえて突き放すように言うと、

山田くんは、スッと下を向き大声で怒ったように叫びだした。

「なんだよ!なんだよ。
顔がいいから彼女にしたら、俺の株が上がると思って告白したのに、なんで恥かかかされなきゃなんいけねーんだよ。お前のことなんて別に本気じゃなかったし。てか、尻軽女だって噂だから絶対いけると思ったのにクソだわ」

なにコイツ…。さっきと態度が全然違う。まるで別人だ。

「なにその噂!私そんなんじゃないし!」

「は?サッカー部の部長の神宮寺とかエースの広瀬とかイケメンを狙ってるんだろ?クラスでも影宮とよく一緒にいるし。何股もかけるビッチだって噂されてるぜ」

え…。
いやいやいや、あたし彼氏いない歴=年齢なんだけど…。

そんな風に周りに思われてるの?
あたし男子に媚びたりしてないし、もちろん狙ったりなんてしてない。

一生懸命ただ、マネージャーをしてるだけ、
部員ははかわいい弟というか息子みたいな感覚だ。
郁斗とだってほんとにただの幼なじみ。

なのに、なんでこんな風に言われちゃうんだろう…。
悔しい…。

悔しいよ…。

なぜか、目頭が熱くなってくる。


「なに泣きそうな顔してんの?言い当てられちゃって困ってんの?
他の男ともさんざん遊んでんだろ?俺とも遊んでくれるよ!な?」

と、ニヤニヤしながら肩を組んできた…。
息が懸かりそうなほど近づけられた顔に不快感しかない。
そして、左手であたしの頬に撫でてきた。

ヤダ…。マジでキモい…。

思わず目をギュと閉じる。