お祭りから二週間が過ぎて、うちのサッカー部は大会で初戦はシードで、実質の1回戦目と2回戦目もなんなく勝った。そしてもうすぐ、準決勝を控えている。
これに勝てば、もちろん決勝に行けそこで勝てば全国大会に進める。

部内でもどんどん士気が高まってきているし、練習の熱量もすごい。

もちろん、今日も朝から練習だ。
10分の休憩を挟む間


「観月!」

と、監督に、呼ばれ走って行く。
監督は、40後半にしては、細身の筋肉質なイケメンで若く見える。よく焦げた肌と対照的な白い歯にトレードマークのサングラスが印象的な人だ。
厳しいけど、怒鳴ったりとかはあんまりない、選手のことをよく見てるし的確な指示が出せる。それに明るく懐の広い父親みたいで部員とても慕われている。

「今日は、久しぶりの午前だけの練習だろ。お前午後から予定あるか?」

「ないですけど…。」

「明日からの合宿の毎年恒例BBQの材料調達してほしいんだけど、今日行けるか?」

うちのサッカー部は、この時期毎年恒例の強化合宿がある。準決勝、さらには決勝で確実に勝てるように、山の合宿場で一泊二日行われる。3年生の最後の夏の思い出づくりの場でもあり、夕食はBBQと決まっている。

「いいですよ。涼香にも声かけて一緒に行きます。」

「それなんだけど、鳴海は荷物の積み込みを頼んでて、そっちのほうは雪代も手伝ってやってくれるらしいから。俺が本当は買い出し行くつもりだったんだが、合宿場の下見とかに行かなきゃならなくなって。悪いな。」

「いえ、大丈夫です!去年も行ってますし。」


「でも、一人じゃ大変だろ。」

監督は、そう言ったかと思うと、一番近くに座っていた広瀬を見つめ、そして

「広瀬ちょっといいか。」

と、呼び出す。広瀬が走ってくると

「お前午後から暇か?」

「はい。」

「なら、観月の荷物持ちになってやってくれ。頼んだぞ。買ったものは夕方学校に持ってきてくれればいいから。」

勝手に決められて、広瀬は一瞬眉をひそめたが監督相手に歯向かえるはずもなく、「わかりました。」と頷くと、買い物メモを受け取っていた。

監督が、グランドから姿を消すと、広瀬は深いため息をついて

「観月さん、練習終わっていったん帰ってから、2時に駅前集合で。忘れないで下さいよ。」

「なんで、あんたがあたしに指図してんのよー。」

と、言い返すと広瀬はまるで聞こえなかったかのようにガン無視で練習に戻っていってしまった。