午前の授業が終わり、クラスメイト達が帰っていく中、隣のクラスの涼香がお弁当をもってあたしのクラスに入ってくる。

涼香は、前の郁斗の席に座りこっちを向くと

「花凛、昨日大丈夫だった?」

と、聞いてくる。

「うん。先帰ってごめん。今日部活も出るし心配しないで」

「よかった!しばらくは無理するなよ。あと、浴衣は洗って今度返すから」

涼香は、言いながらお弁当を開けると食べ始める。

抜群のスタイルに似合わず、涼香のお弁当は男子並みの大きさの二段弁当。
よく、くびれたお腹の中にこれだけの食べ物を詰め込めるな…。

あたしも、お弁当の包みを開けて食べ始める。

「ねぇ、雪代くんと花火大会見たんでしょ?どうたった?」

「綺麗だったよ」

「じゃなくて、ときめいたりとか…。手を繋いだりとか…。」

涼香はお箸をくわえたままキョトンとした顔をすると

「手なんて最初から繋いでたし、花凛が思ってるようなことなにもないよ」

そういえば、ナチュラルに最初から手を繋いでたことを思い出して、頭を抱える。
普通の男女はナチュラルに手を繋いでなにもないとか言わないから!

「なんていうかさ、颯真はそういんじゃないんだよね。かわいい弟みたいな?それに…。」

涼香は、箸を置いて少しだけ俯くと呟くような声で

「眩しい花火を見て頭に浮かぶのは…。」

ガラッ

涼香の言葉を遮るように教室のドアが開くと、時雨が立っていた。

「お前ら、ささっと食べて早めに部活来いよ。」

「うん。わかってるって!」

と、あたしが返すと「そうか、じゃあ俺は先に行ってるからな」と、出ていった。


「で、なんだっけ?」

と、本題を戻すように涼香に言うと、涼香は首をすくめて

「ん?なんでもない!ほら、早く食べて行こう!」

と、掻き込むように食べ始めた。