あたし、観月 花凛(みずき かりん)。
高校3年生だ。涼香と同じであたしもわりと大雑把な性格であり、
サッカー部のマネージャーになったのも、たまたま涼香の家で見た、
ワールドカップで興奮してしまい、
涼香がマネージャーするというので一緒にする!
と賛同しただけだ。
今では、ルールも理解して、得点を出したりも出来るが、
部活に入った当初は、ルールどころかポジションすら知らなかった。

涼香と違うのは、
あたしはファッションやメイクが大好きで、流行に敏感だと思う。
だから、最初は部活で日焼けすることに絶望し、
少しの油断が命取りだと、夏でも出来るだけ長袖で、必ず帽子を被る。
さらに、何重にも日焼け止めを塗っている。
涼香からはまるで日焼け止めのミルフィーユ構造なんて言われるくらいだ。

焼けたくないし、しかも部活に休みがほぼないし、キツい。
クラスの友人からは、「辞めたら?」なんて最初は、よく言われた。
「そこまでして男漁りかよ」と、嫌みや悪口も言われた。

だけど、
選手の成長とかチームの勝利とかを一緒に経験する喜びを知ってしまった。
だから辞めようなんて思えなかった。
遊べないし、汗でメイクが落ちるから、部活のときはほぼノーメイクだし、
おしゃれなんて言ってる余裕もないけど、充実してるし楽しい。

ただ…。

1つだけ、問題があるとしたら


生意気な後輩だ。




広瀬 柊晴は、ルックスだけ見ればきめ細かい肌と、
癖がないサラサラなマッシュの色素の薄い髪。

顔が小さく、目元は、少し切れ長で鼻筋はスッと通っていて
整った顔立ちをしているせいか、高2とは思えないどこか艶ぽい色気のある雰囲気を感じさせる。

身長も高く175センチで150センチしか身長のないあたしには、見上げるくらいだ。
成績もよく、まだ、3年のいる部活で2年なのにレギュラー入りしているにも関わらず、常に学年トップ3には入っているらしい。

また、家は有名老舗旅館の一人息子という由緒正しい家柄。
それに、祖父が空手道場をしているらしく、武道も出来るというハイスペック。
客観的に見ればイケメンだし、女子からの人気も高い。
ただ、あまり周りを寄せ付けず、神経質そうなところがあり、
直接話しかけに行く女子は少ない。
みんな、遠巻きに、硬派でクールなところがかっこいいと言っている感じだ。

あたしからしたら、コイツのどこが硬派だよ!と思う。
一応、敬語で話しかけてくるがいつも、どこか涼香や他の先輩に比べて
バカにした感じで話しかけてくるし、実際、からかうように生意気を言ってくることもある。それが、腹立たしいし、ムキになって言い返してもあたしより、賢いぶん口がうまいのか、さらに倍にして返されてしまう。
ほんと、ムカつく!