あたしは、郁斗と別れてすぐに角を曲がる。

郁斗の家から歩いて5分のところにあたしの家はある。


郁斗は寂しいんだ。とっても。
昔は、あんなにチャラくて軽い感じではなかった。

小さい頃は、女の子に泣かされちゃうような泣き虫な子だった。
だから、いつもあたしが郁斗の手を引っ張って歩いてた。


だけど、あるときから変わったんだ。

それは、約4年前、あたし達が中学3年の時だった。
もともと、郁斗のお母さんは体が弱かった。
なのに、さらにそれが悪化して車椅子で生活するようになったタイミングで
お父さんの海外赴任が、決まった。


その海外赴任は断ろうと思えば、断ることのできたものらしい。
だけど、郁斗のお父さんは出世のために海外に行くと決めた。
その時、郁斗とお母さんとまだ生まれたばかりだった弟を残して。

郁斗は、その時からグッと強くなった。
たくましくなった。

もともと、郁斗は小さい頃からお母さんにワガママを言っているのを
見たことがなかったが、
文句や愚痴ひとつ言わず家事や弟の面倒を見るようになった。

たぶん、誰も頼れない家族を支えるのは自分しかいないっていう
使命感があったんだと思う。

その反面、
突然髪を金髪にしてピアスを開けた。
背負わされたものに、対する小さな反発だったのかもしれない。

それに、夜な夜な女の子達と遊ぶようになった。

いろんな女の子に手を出してして寂しさを埋めようとしているように

私には見える。