学校に着いたのは、やっぱり7時前。

誰もいない、静まり返った、グランドと通り抜け

部室のドアを開ける。


中には、広瀬がボールを持ってベンチに座っていた。

広瀬は、少し驚いたような顔をしてこっちを見てなにか言いかけたが、
いったん、口を閉じたあと

「おはようございます。観月先輩。」

「おはよう。来るの早すぎじゃない?練習8時半からだよ?」

「俺は、いつも2時間前には来て自主練してるので…。」

「え?6時半から、何時に起きてんのよ!?」


広瀬に背を向けて荷物をロッカーに置いていたあたしは、驚いて振り替える。

「5時前には、毎日起きて祖父の空手の稽古に付き合ったり、勉強してます。」

当然のことのように、こっちを見もしないで靴紐を結びながら言った。

「五時半とか絶対ムリだわ…。」

「まー、いつも遅刻ギリギリに来てる観月さんは、ムリかもしれませんね。
むしろ、今日はこんなに早くどうしたんですか?」

彼は、靴紐を結ぶ手を止めてこっちを見る。

「は?いつもじゃないし!週に3でギリギリになるだけだし!それに、女の子は準備に時間がかかるから仕方ないでしょ!」


お礼を言わなきゃ、と思いつつタイミングがつかめず出てこない。

チラリと広瀬を見るとまだ、こっちを見ていて目が合ってしまい、
慌ててそらす。

「今日は、明日の練習試合の時に使うテントを倉庫から出して、洗っておこうと思ったの。
いつも涼香がやってくれるから、たまにはあたしがしないと申しわけないじゃん。
そういうことだから、あたし行くわ!あんたも自主練せいぜい頑張りな!」

あたしは、早口でそう言うと、帽子をしっかりと被り、部室出てしまった。