校門に着くと、楽しそうに広瀬と一緒に自主練をしていたんであろう
練習着の雪代くんと涼香が話していた。

「遅かったな!また、告白でもされてた?」
ちょっと、からかうように涼香が聞いてきた。

「あー。うん…。そんな感じ?」

「柊晴も、部室の鍵返しに行くだけなのに、遅かったね。」

「まーな。」

いつもの、仏頂面に戻った広瀬が素っ気なく雪代くんに答えていた。

「せっかくだし、一緒に帰るか!」
と、涼香が言い出すと、
雪代くんは、嬉しそうにニコニコしながら「はい!もちろんです」と
返事をしている。

雪代くんは、涼香のことが大好きだ。LOVE的な意味で。
一年の時に、涼香に一目惚れしてから、雪代くんはモテるはずなのに、
ずっと涼香一筋でとっても慕っている。
なにせ、涼香の側に居たくてサッカー部に入ったぐらいだ。
たぶん、雪代くんの世界は涼香中心で回っている。
誰が見たって、雪代くんから涼香への大好きオーラがわかるのに、
涼香本人は全く気づいていない。



4人で帰るということは、
必然的に広くない歩道で2:2に別れることになる。
まるであたりまえのように、雪代くんは涼香の隣に並び楽しそうに話している。

前を歩く二人は美男美女でお似合いだな、なんて思う。
それに、涼香は雪代くんの好意に気づいてはいないけれど、雪代くんのことは
気に入ってはいるらしく、後輩の中でも一番可愛がっている。
しかし、好きというわけではないらしく、涼香は
「颯真は、飼ってる犬に似ていてほっとけない!」とか
「あたしの恋人はサッカーだし」とか、言っていて雪代くんが少しかわいそうだ。


そして、あたしは仕方なく広瀬と隣に並び二人の後ろを歩く。

「こうなると思ったから、一緒に帰りたくなかったのに…。
大型犬め。」
広瀬が前にいる雪代くんを向かってボソッと呟く。

「今なにか言った?」

「いえ、なにも…。」
広瀬が無表情で、答える。

「あたしみたいな、かわいい子の隣に歩けるのになにか不満でもあるわけ?」

「自分でよくそんなこと言えますね。
観月さんなんて、チビなだけで可愛げとかないじゃないですか。
あまりに、小さすぎて至近距離で歩かれると視界から消えますし。」

「は?こっちだってアンタと話すと上向かなきゃ行けないから、肩凝るんだよ!」

「それは、すみませんね。屈んであげましょうか?おチビな観月さん」

全然悪くなさそうに、からかうような目で広瀬が言う。

「あーもう!!生意気!」

私は精一杯睨み付けた。

不穏な空気に、やっと気づいた涼香が振り返り

「また、じゃれあってる!ほんと、仲良いな!」

なんて、笑った。

「「どこが(ですか)!?」」

初めて、二人の声が揃った。


「やっぱり、仲良いじゃんか!な?」

涼香が、同意を求めるように雪代くんに言うと、

雪代くんは、「はい!そうですね」と、ニコニコしている。

そんな、様子に広瀬は軽くため息をつく。

「じゃあ、うちらこっちの方向だから」

涼香が、曲がり角の方を指差す。

「最後まで送っていきますよ!」

と、紳士的に雪代くんが言ったが

「まだ、暗くもないし大丈夫!
明日は朝から練習があるんだから、アンタらも早く帰って休みな!」

と、涼香はかっこよく断り、

それに、ちょっと不満そうな、そして名残惜しそうな顔をする
雪代くんと

「じゃあ、また。」
と、小さく頭を下げる広瀬に





手を振り、涼香と角を曲がった。