おそるおそる顔を上げ先生を見る。
 その表情は今まで見たこともないくらい険しかった。


「無茶するな!俺に頼れよ!お前見てると危うくて気が気じゃねぇよ!!
 俺が通り掛からなかったらどうなってたと思うんだよ!?」


「先生…」


 先生がもう一度私の隣に座り直す。そして私の髪を指で梳くように優しく頭を撫でる。

 その大きな手に包まれる感覚に、私はつい堪えていた涙が一粒零れた。


「…ごめんなさい」

「分かったらほら、携帯」


 先生がもう一方の掌をこちらに差し出す。


 私はバッグのポケットからスマホを取り出した。

 でもそれを先生の掌には渡さず言う。


「でも…帰りたくない。

 私…私、先生といたい…
 先生と一緒にいたい!」


「……わかった。

悪いようにはしない。約束する」


 先生が私に頷く。


 その真っ直ぐな眼に私は安心して、私はスマホに自宅の番号を出してコールする。


 トゥルル…

「舞奈!?」


 ワンコールで母の声がする。


「……」

「舞奈なの!?どこにいるの!?」

「……

そうだけど…

でも私…帰らないから!」

「舞奈!」


 隣でやり取りを聞いていた先生が、

「そうじゃないだろ?ちょっと貸せ」

と私の耳元からスマホを取り上げる。