星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」


「ところで舞奈、イカ捌けるの?」

「うーん、多分。生物の授業で解剖したことがあるから」

「相変わらず君、いいな。頼もしいよ」

「もう!また私のこと『男前』とか言う」

「言ってない!言ってない!」


 何てことないやりとりをしながらふたりキッチンに並ぶ。


「昴くん、包丁どこ?…の前に手洗いたい」

「あぁ包丁はここ。鍋はこっちに出しとくから。あと手伝えることあったら何でも言って」

「あ、じゃあねにんにくの皮剥いて欲しいな」

「了解」


(あ…なんかこういうの、大人の恋人同士っぽい)


 隣に立つ昴くんの様子を横目で窺う。
 綺麗な指先でぺりぺりとにんにくの皮を剥く昴くんはいつもの先生よりちょっと、ほんのちょっと、近い。
 物理的な距離というよりきっと、見えている世界が、近い。大人の恋、大人の世界。


 そうやって少しずつ同じ世界が見えたらいい。

 ずっと、同じ世界にいられたらいい


(新しい世界へようこそ、新しい私)


 真新しい私はただ真新しいわけじゃなくて、今までの私があるから。貴方と出逢って、貴方と乗り越えてきた過去があるから。
 今までも、今も、そしてこれからも。貴方と共に出逢う新しい世界を歩いて行きたい。

 怖くなんてない。だって、どんな時も貴方は私の行く道を照らしてくれる。星のように。


 そして私も。

 あの頃の私とは違う。ただ貴方の光を頼りに弱々しく生きる私ではなくて、貴方が迷った時には、今度は私が貴方の行く道を照らす星でありたい。ささやかな光かもしれないけれど、この星彩に包み、抱き締めてあげたい。


 だって私は─


「ねぇ昴くん」

「ん?」

「あのね…




 愛してる」





     《星降る夜はその腕の中で ─終─》