程なくやって来た電車に乗り込む。そこそこに混んだ車内でふたりドアの傍に立った。

 窓から見える景色は私の街のそれ。東京とは全然違ってなんだかほっとする。
 檸檬色に暮れていく西の空に遠くの山々のシルエット。ガタンガタンと列車が鉄橋に差し掛かると、真下には広い河の河面がトパーズ色にキラキラとさざめいている。


「綺麗だね」

「うん…」

「舞奈も」

「え…?」

「夕陽に照らされて一層綺麗だ」

「えっ、と…」


 不意打ちのお世辞に照れちゃうよ…


「えーっ!担任南条なのぉ?」

 ふと背後に聞こえた女の子の声に振り返る。
 そこには大学生だろうか私服の女の子と、それから制服姿の女の子二人がいた。制服の子たちは超ミニスカートに大ぶりのピアスと海外アイドル風の赤いリップがギャルっぽい。

(あ、北高校の制服…)

 父の勤める学校だ。


「南条どちゃくそ厳しいじゃん。うわー1年間ご愁傷さま」

「あ、でも先輩、最近南条前みたいには怒んないんですよぉ」

「そうそう。服装とかメイクとか全然言われないし」

「えっ、まじで!?」

「こないだ進路相談とかもすっごい親身になって話聞いてくれたし」

「あたし彼氏の相談とかも聞いてもらいましたもん」

「えぇっ、それハンパないってー!南条変わったねー」

「あたし今の南条なら結構すこ」

「あー、それなー!」


(お父さんたら!)

 思わずぷっと笑いが漏れてしまうと、隣で先生も手の甲で口元を隠してくくっと忍び笑いする。


「お父さんほどのベテランでも頑張ってるんだな」

「うふふ。だね」

「俺ももっと勉強しなきゃな」

           *