星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

 本を開くと附箋の他にも傍線が引かれていたり、「資格試験について~」「就職率高い」等と書かれたメモがあちこちに挟まっていたりした。


「先生、これ…」

「あ、俺去年まで就職活動してたから、多分他の先生より得意なんだよ、こういうの。ここの学校、高卒で就職する子少ないしね」


 私のために…?


 そう思うと、胸に何か詰まったように直ぐに言葉が出ない。


「…ありがとう、ございます」


 やっと出てきた言葉に先生は


「どういたしまして」


と笑って答えて、昨日のように私の隣に座った。


「附箋は一応張ったけどさ、大学、絶対行かなくちゃとかも全然思わなくていい」


 木々を通り抜けてきたわずかな涼風を感じようとするように先生が空を仰ぎながら言う。


「南条は英語も出来るし、国大の模試も良いって言ってたじゃん?
 だから生かしたらいいかなー、と思っただけだけど。

 もっと縛り無しで好きなものを探すとこからやっていいと思うから、進学しなきゃとか思わなくていいと思うんだ。

 なーんて。
 こんなこと言ったのバレたら、進学率上げたい上の先生たちに怒られちゃうかな?」


 先生がいたずらっ子みたいににやっと笑う。

 それから

「まー時間があったらでいいから」

と付け足した。