『…はい』

『その壮気を更に1年維持出来るのか?』

『!

 出来ます!もちろん!!』


 縋りつく思いで父の眼を見た。

(お願い…どうか…)


 父がゆっくりと口を開く。


『その必要はない』

『え…?』

『春から外大に行きなさい』

『…お父さん?』

『お前の姿をずっと見てきた。投げ出すことも腐ることもなく必死に努める様を見て、本気なんだと伝わってきた。

 その心意気のまま、東京で頑張ってきなさい』

『お父さん!』


 厳めしい父の顔がふわりと綻んだ。


『身体の方はどうだ?怪我はないのか?』

『うん…大丈夫』

『そうか』

『お父さん、あのね…』

『なんだ?』

『……

 ありがとう』

『どうせ目標が定まっているなら無駄な1年を過ごす必要はない。

 知ってるか?舞奈。1年入学が遅れれば1年社会に出るのが遅れる。すると受け取れるはずだった1年分の給与が取得できなくなる。
 ここで言う1年分は新入社員の1年分、即ち2、300万とかいう小さい話じゃない。社会人生活の最後の一年、例えばお前ならそうだなぁ、年収3000万とか、そういう金額の話だ。
 生涯年収のうちの3000万が無駄になるとなれば、入れるものなら1年でも早く大学に入った方がいいに決まっている』

『年収3000万て!うふふ。

 分かったお父さん。私頑張ってくる』

『応援しているよ、舞奈』

           *