「俺が口出しすることじゃねぇとは思うけどさ。
別れた方がよくね?」
「……
そんなつもりないから」
「だけどなぁ…あんだけ出回ってるといつ上のセンセーの目に届くかわかんねーぞ?」
「その時は俺が辞めるよ」
「……
馬鹿なの、お前」
「は?」
ジョッキをなぞる指を止めてにっしゃんに不愉快な視線を送ると、にっしゃんは呆れたような表情で俺を見ていた。
「お前はいいよ。仕事途中で投げ出して東京帰ってまた学生気分で面白可笑しく暮らせばいいんだから。
けど南条のこと考えてみ?
アイツかなり優秀らしいじゃん。大学もかなり良いとこ狙ってんだろ?
それがお前とのことが学校にバレて退学でもなってみろよ。高校卒業資格がないから受かった大学も入れないんじゃん?
そんで逃げ帰ったお前と違ってアイツは地元で『オッサンと如何わしいことして高校退学になった娘』って後ろ指指されて生きるんだぜ?」
「……」
「ホントにアイツのこと愛してんだったら、どうしてやるのがベストなのか自ずと知れてんじゃんね」
愛してる─
当たり前だろ、ホントに彼女のことを愛してるよ。
何時でも何処でも胸を張って『愛してる』と言える関係でないことは分かってた。
それでも俺は間違いなく彼女を愛しているし、それは紛れもなく純粋なもので、例えば若い娘をたぶらかすような如何わしいものとは真逆の、決して後ろめたい気持ちを抱えて逢瀬を持たねばならないものではないと思っている。
好きになった相手がたまたま生徒だっただけ。
なんでそんな単純なことが許されないんだろう─



