「お前、いや、『お前ら』だよな?これ」

「……」


 彼女の肩に腕を回して引き寄せる男は紛れもなく俺で、自分でも呆れるくらい節操なく物欲しげに唇を寄せる卑しい表情まで見て取れる、言い訳のしようもない代物だった。


「最近はスマホもカメラがめちゃめちゃ良くなってるからなぁ」


 にっしゃんが新しく運ばれたビールに口を付ける。 


「誰が撮ったかはもう分からんけど、学年関係なく相当廻ってるみたいだったな。
 南条の方ははっきりとは写ってないけど、それでもお前ら夏休みの一件もあったからどうも南条じゃねぇかって噂になってるらしい。いや、今時の子供のネット社会怖いわ」


 南条の方は白いマフラーと長い髪に遮られて横顔の頬骨の辺りと長い睫毛がちらりと見えるくらいで、勿論俺にはその頬と睫毛だけでだってそれが南条のものだってことは紛うことなく分かるわけだけれど、他人には見て取れない程度なのがせめてもの救いだった。

 それでも南条の名前が囁かれているとは…


「なぁ、お前らヤったの?」

「!…そういう下世話な言い方するなって…」

「あ、純潔な愛なわけね。いや、それならいいんだけど。

 いちおー教師としてここのガッコに来てる以上は俺も犯罪を見過ごす訳にはいかんから」


(犯罪…)

 ビールを口にする気にならず、ジョッキの水滴を指で撫でる。