店に着くとにっしゃんがカウンター席にいて、既にビールのジョッキを傾けていた。


「お疲れ様です」

「おー」

 コートを脱ぎ、にっしゃんの隣に腰を下ろす。


「生ビール」

「もう一つ」

「ありがとうございまーす」


 にっしゃんがカウンターに置かれたスマホを手に取る。


「何?用って」

「……」


 にっしゃんは問いに答えずスマホを操作すると、俺の前にごとりと置いた。


「……


 え…」



 何気なく覗き込んだ画面に映された写真に背筋がぞくりとした。


「…これ…どうして…」

「どうしたと思う?」

「……」


 何か答えようとして、でも何も出てこなくて、ただ唇が震える。


「生徒の間で廻ってた」

「え…」

「「その写真俺にも送って」って、お陰でJKのライン、ゲットできたけど」

「……」


 廻ってた、って…

 背中を嫌な汗が伝い、頭の中は真っ白になる。


 恐る恐る、もう一度写真を覗く。


 まるで映画のワンシーンのように上手いこと撮られた写真だった。

 澄み切った空に滲む紅梅をバックに、口付けを交わす男女の写真─