(!!)


 いつも華奢に見える先生からは思ってもみないくらいその力は強くて…


 そう言えば学校でパーカーを羽織ってると見えないけれど、ここで半袖のTシャツの袖口から覗く腕は意外と筋肉質なのに気付いてた。


(先生…?)


 水が流れてシンクに弾ける音だけが響く中、私たちは見つめ合っていた。


 真剣な眼差し。

 次第にその距離が少しずつ詰まっている気さえする。

 鳶色の瞳に映る私の瞳までもが見える。


「せんせ…」


 沈黙に堪えきれなくなり、口を開いた時。

 足音が近付いて来るのが聞こえた。


 私たちがどちらからともなく飛び退くのと同時に、

「燃えるゴミの袋どこー?」

と言いながら後輩が顔を出す。


「…南条、早く冷やしとけ。保冷剤持ってくるから」


「…はい」


 私は右手を流れる水に浸して、足早に戻っていく先生の背中を見送る。


 入れ替わりに近付いてきた後輩が、

「先輩どうしたの…って、キャー!手、腫れてるじゃないですかぁ!?」

と声を上げる。



「大丈夫よ。あの…初原先生が…看てくださったから」


 この時、先生の名を口にするのに緊張してしまったのはどうしてだろう─


    *   *   *