驚いてばっと振り返ると…



 運転席には「くくっ!」と声を殺して笑う先生の姿があった。


「せ!先生っ!?」

「南条がこんなびっくりすると思わなかったから…あはは!」


 先生は悪戯が成功した子供みたいに笑う。


「もう!笑わないでよ!ホントびっくりしたんだから、どうしよう、って」

「あはは!ごめんごめん!」


 言いながら先生が車から降りてくる。


「とりあえず乗って」


 そう言って先生は助手席のドアを開けてくれた。


「…あ、ありがとう!」


 おずおずと座席に座る。
 私がコートの裾を膝に乗せたのを確認すると先生はドアを閉めてくれて、再び運転席に乗り込んだ。


「まだイルミネーションには早いけどとりあえず行こうか」

 先生が車を滑り出させる。


「先生、車運転するんだ?」

「普段はあんまり乗ることないけどね。ほら、ここもそうだけど東京とか街の中は電車も網羅してるし、駐車場探すのも手間だし、じゃあ電車でいいかな、ってなるから」

「こんな格好良い車なのに勿体ない。」


 メタリックブルーのSUVは内装もブラックレザーのシートがスタイリッシュ。きっといいステレオを載せているのだろう。小さく流れるラジオの音も低音が綺麗に響く。


「あぁこれ?俺の車じゃないんだ」

「そうなの?じゃレンタカー?」


 それにしてはお洒落過ぎるし、後部座席にぽんと積まれたシューズバッグやボールバッグっぽいものとかが生活感があり過ぎる。


「ん?企業秘密」


 先生は横目でちらっとこちらに視線を投げて、くすっと笑った。