ブブブブッ…


 ポケットの震動に俺は慌ててスマホを取り出す。

 ポップアップには南条からのメールが届いたことが示されていた。


 待っていたレス─

 直ぐにそれを開く。



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Date: 201x 12/xx 16:11

From: 南条 舞奈
〈maina-et-petitkumachan…xx@……〉

Sub: ありがとう♡

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心配かけてごめんなさい。
でも一人で大丈夫だよ!

また夜連絡します♡

-END-
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(『♡』とか…使うか…?)


 可愛いメールに心臓が鷲掴みされた。

 英語準備室の殺風景な天井を仰ぎ、右の手で口元を覆う。そうでもしないと口から心臓が出てきそうだ。


 そう言えば初めてのメールの時もそうだった。

 南条にアドレスを渡してからメールが来るまでの数日間、恥ずかしながら、いつ来るかいつ来るかと寝ても覚めてもスマホばかりが気になっていた。

 4日目、待ち焦がれたメールにどんなにか胸が高鳴ったか。


(ホント俺、中学生みたいだな…)

 自分の冴えないぶりに溜め息混じりに苦笑する。

 あれから崇高な愛も程なく恋に変わってしまったわけで、そんなところも全部含めて本当に冴えなくて情けない。