「…!」


 私の眼に先生の姿が飛び込むのと同時に、先生もまた私を見つけ、立ち止まった。

 まるで火花が散るようなほど、視線がしっかりとぶつかり合うのを感じた。


「舞奈?」


 隣で清瀬くんの声がする。
 でもそれも幻の向こう側のようにぼんやりと曖昧だった。



「南条…」


「!!」


 私は先生の声に背中を突かれたように、咄嗟に清瀬くんの手を解いて後ろを向いて走り出した。


 こんなシチュエーションで逢いたくない。

 先生に失恋して、清瀬くんに縋って、それでなんとか均衡を保っている惨めな私なんて、先生に見られたくない。


 それに、あのキスの意味も理解できない子供な私を見られたくない─



 人混みを掻き分け走る。


 走りながら後ろを振り返ると、後ろから走ってくる先生の姿と、その向こうに清瀬くんと仁科先生の姿が見えた。


「追わないの?」

「…追ってもしょうがないの、見りゃ分かるでしょ?」

「ふーん…分かってんじゃん、餓鬼のくせに」

「……」


          *