にっしゃんと関わるようになった契機は夏休みが終わり新学期初日の夜。


「おぅ、お疲れ!」

「おっ!来たなイケメン教師!」

「勘弁して下さい!そんなんじゃないから!!」

「止めとけ、にっしゃん。初原今日はかなり気が立ってるから冗談効かないぞ」


 宇都宮先生行きつけの店。

 その日は宇都宮先生と俺の他ににっしゃんが一緒で、俺は残務を終わらせて遅れて顔を出した。


 そう、あの日は夏休みに南条とグラウンド脇で逢っていたことで高3の学年主任の岩瀬先生と生徒指導主任の山本先生に追及された日だった。


「で、ぶっちゃけ南条とはどうなのよ?」

 にっしゃんが早速面白そうに身を乗り出す。


「だからそんなんじゃないって!」

「まぁ、仕事熱心過ぎるのも仇になるよな。お疲れお疲れ。まぁ飲め」

 にっしゃんを睨む俺を宇都宮先生が宥める。


 誰がどう垂れ込んだのか、くだんの件が上の先生方の知るところとなっていた。

 とは言え、事実として俺がやったことは進路指導と感極まった南条を落ち着かせたこと、それだけだ。


 俺の胸の内は誰の知るところでもない。

 何の問題もない。

 そう、何の問題もないんだ。


 だから俺がそう説明すれば解決するものと思ってた。


 が…

 事実確認が必要と、岩瀬先生と山本先生に南条の担任の村田先生を加え、南条と面談することになってしまった。

 結果山本先生の配慮もあり事無きを得たが、南条の進路指導は全面的に村田先生が担うことになり、俺はその一切を手を退くことになった。


(南条と俺の間を引き離さないで─)


 夏休みの合宿以降、既に俺にとって南条が全ての支えになっていた。

 南条がいることで俺はここで生きる意味を得始めていた。

 故に南条を失うことは、元の光のない日々に戻ってしまうことを意味していた。